ゴ社は、30類「菓子,パン」で「MONCHOUCHOU\モンシュシュ」を商標登録して、菓子のブランド名として使用していた。「MONCHOUCHOU」は、フランス語で「Mon(私の) chouchou(お気に入り)」という意味です。1981年に登録ということは、かなり古い商標ですね。
【第30類】菓子,パン
【出願日】1977年6月29日
【登録日】1981年8月31日
モ社は、43類「飲食物の提供」で「MONCHOUCHOU\モンシュシュ」を商標登録して、店舗名として使用していた。同一商標であっても、ゴ社の「菓子,パン」と「飲食物の提供」は非類似の商品・役務なので、双方に商標登録が認められています。ちなみに、2005年当時はまだ「小売等役務」が指定役務として保護対象ではありませんでした。
【第43類】ケーキ又は菓子を主とする飲食物の提供及びこれらに関する情報の提供
【出願日】2005年9月20日
【登録日】2006年3月24日
モ社は、2003年9月4日に有限会社モンシュシュとして設立され、2007年7月25日より株式会社モンシュシュに社名変更しています。モ社は創業時よりロールケーキ「堂島ロール」を販売しており、2009年には「堂島ロール」を買うために長蛇の列ができるほどの人気となった(余談ですが、筆者も臨月の大きなお腹をかかえて30分ほど並んで購入した記憶があります)。またモ社は、下記商標を商品の包装や広告などにも使用しており、これに対してゴ社が使用差止及び損害賠償を求めて訴えを提起した。
原審である大阪地判は商標権侵害を認め、これらの商標の使用差止め及び抹消、並びに損害賠償を命じた。これに対して、被告モ社が控訴したが、大阪高判は原審とほぼ同様の理由により商標権侵害を認め、損害賠償を命じた。
ゴ社の指定商品は「菓子,パン」です。モ社は「洋菓子の小売」という役務について商標を使用していたところ、店舗やの包装紙などに商標を使用することにより、『商品の出所と役務の提供者が同一であるとの印象を需要者に与え,出所の混同を招くおそれがある』と判断されました。 2005年には「小売等役務」が導入され、また商標法2条6項では「商品」と「役務」が互いに類似することが明記されています。
損害賠償請求の事項は、損害を知った時の翌日から3年の時効期間となっているところ、本件では、損害賠償請求の事項についても争われました。裁判所の判断は、『モ社の洋菓子店舗「パティシェリー・モンシュシュ」は、平成16年9月頃から平成18年の間において、雑誌等の各種メディアやブログで取り上げられており、一定の知名度を有してはいたものと認められるから、同じ関西地区に本社を置く洋菓子の製造販売業者であるゴ社も、上記店舗の存在と洋菓子販売の事実を認識していたものと推認できる。にも関わらず、本件訴訟が提起されたのは平成22年1月20日であり平成18年8月~同年12月分の使用料相当額の損害については、時効により消滅したと解すべきである』として時効を認めました。
モ社は、訴訟係属中に会社名を「株式会社モンシュシュ」から「株式会社Mon cher(モンシェール)」に変更しました。このような会社名(商標)変更のリスクを軽減するためにも、商標を使用する際には、その商標が他人の商標権の侵害に該当していないか事前調査を行い、使用前には商標出願・登録しておくことが重要です。