商標登録とは、特許庁による行政処分です。分かりやすくいうと、自分が使用したい商標を特許庁で登録してもらうことを商標登録といいます。登録することにより「これは、私の登録商標です」と主張できます。また、その登録商標については他人が勝手に使用できなくなるので、独占的に使用することができます。
商標登録は、申請すれば全て登録されるわけではありません。特許庁において、登録できるかどうかの審査が行われます。審査の結果、商標登録の要件を満たしている場合に、登録が認められます。
商標登録が完了したら「商標登録証」が届きます。これは権利者証のようなものではなく、「登録できました。おめでとうございます。」という賞状のようなものです。万が一「商標登録証」を紛失した場合でも、権利がなくなるわけではありません。
商標とは、みなさんの身近にあるものです。いつも利用しているコンビニも「ファミリーマート(登録1426479)」「セブン_イレブン(登録1473677)」「ロ-ソン\Lowson(登録2321272)」などと、それぞれの名称がありますが、これらの名称も商標です。
例えば、「コンビニで唐揚げ買ってきてよ」と言われたら、迷いませんか?
「ファミリーマート」の「ファミチキ(登録5138647)」かな?
「セブンイレブン」の「ななチキ(登録5926326)」かな?「丸から(登録5927649)」かな?
「ローソン」の「からあげクン(登録5138647)」かな?
と迷います。このような時に、どの店のどんな商品なのかを識別するための標識(店舗名・商品名)が「商標」なのです。お目当ての会社の商品と他社の商品とを区別するために、「商標」は重要な役割を担っています。
商標は、文字だけのものもあれば、文字と図形を組み合わせた商標、図形のみの商標、キャラクターの商標、立体的な商標、音響の商標、ホログラムの商標、色彩のみの商標、動きのある商標、位置の商標など、様々な商標があります。
商標については、商標法2条1項で下記のように定義されています。
この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
この定義から、「商標」とは「業として使用するもの」であることが前提となっていることが分かります。業として使用しないものは「商標」ではなく、単なる「標章」です。業として使用されることにより、はじめて「商標」としての機能(自他商品等識別機能、出所表示機能、品質・質保証機能、宣伝広告機能)を発揮させることができます。
「業として」とは、「事業として」という意味です。家庭内での使用や個人的な使用は「業としての使用」に該当しません。
商標がどのようなものかを理解するには、登録商標の具体例を見るのが一番手っ取り早いでしょう。
「株式会社セブン-イレブン・ジャパン」の商標登録です。
上段左端の商標(第5933289号)は、色彩の商標登録です。色彩の商標は、2014年の法改正により新たに登録が認められるようになった商標です。この色彩を見たら、誰もが「セブンイレブン」だと認識できますね。
「丸大食品株式会社」の商標登録です。
左端の商標(第5096114号)は立体的な商標です。この袋を見ると、ウインナーが食べたくなりますね。
「久光製薬株式会社」の商標登録です。
左端の商標(第5804299号)は、音響の商標登録です。音響の商標は、2014年の法改正により新たに登録が認められるようになった商標です。コマーシャルでもお馴染みの「ヒ・サ・ミ・ツ」の音響商標です。中央の商標(第6022320号)は、色彩商標です。この色彩を見たら、久光製薬のサロンパスを思い浮かべる人も多いでしょう。
商標登録をする際には、商標を使用する商品又は役務(サービス)を指定する必要があります。商標だけを登録することはできません。出願書類には、指定したい商品又は役務を記載します。ここで指定された商品を「指定商品」といい、指定された役務を「指定役務」といいます。
商標登録は、単に商標を登録するものだと思っている人も多いかもしれませんが、その商標を使用する範囲(権利範囲)となる商品又は役務も一緒に登録します。商標登録後は、その指定した商品又は役務の範囲内で商標権の効力が有効なものとなります。
商品又は役務は、それぞれ第1類から第45類に分類されています。商品の区分が第1類から第34類まで、役務の区分が第35類から第45類までです。どの商品がどの分類に属しているかは、特許庁のHPの「類似商品・役務審査基準」で確認できます。例えば、「ズボン」や「スカート」は第25類に該当し、「チョコレート」や「パン」は第30類に該当します。
商標登録をすると、多くのメリットがあります。
商標登録をすると多くのメリットがあります。安心して事業や商売を行うために、商標登録は重要なんですね。
もちろん、使用している商標を必ず登録しなければならないというわけではありません。登録せずに使用することもできます。ただし、それには大きなリスクが伴います。もし、他人がその商標を登録してしまえば、もう使用できなくなってしまうからです。「先に使用していた」「長年使用しているのに…」という言い訳は通用しません(使用の結果、相当有名になっている場合は例外ですが…)。
会社を設立した時、新商品を販売する時、新しいお店をオープンする時など、大切な商標であればあるほど、他人よりも先に出願して商標登録しておきましょう。
「ドメイン名」とは、インターネット上の住所のようなものです。ドメイン名は、例えばホームページのアドレスの一部として使われています。弊社のホームページのアドレス(URL)でいうと、「http://www.shouhyou.com/」のうち「shouhyou.com」の部分がドメイン名に該当します。
ドメイン名は、二つとして同じ名前はありません。既に取得されているドメイン名と同じ名前は取得できないからです。つまり、ネット上には、同一のドメイン名は存在しません。その点、商標登録の場合は、同一の商標であっても、商品又は役務が非類似であれば、登録することができます。
さてここで問題となるのが、ドメイン名と商標登録の関係です。本来、ドメイン名は、ネット上の住所を示す役割を担うものであり商標としての機能を発揮するものではありません。しかし、例えばオンラインショップのサイトのドメイン名などは、そのサイトのサービスの出所を識別するような商標的な役割を担う場合もあり得ます。このような場合、そのドメイン名が他人に商標登録されていれば、その商標権者から商標権侵害として訴えられてしまう可能性があるのです。
あなたのドメイン名の使用が商標権侵害に該当しているかどうかは、ケースバイケースで一概にはいえませんが、このようなトラブルを避けるためにも、ドメイン名を取得した後には、それについて商標登録しておいた方が安心・安全でしょう。
会社を設立した際には、必ず商業登記を行わなければなりません。商業登記とは、会社を設立した際に、会社の商号(名称)、所在地、代表者の氏名などを法務局に登記することをいいます。
商標(商標登録) | 商号(商業登記) | |
---|---|---|
定義 | 自他商品等を識別するための標識 | 営業上の自己を表示するための名称 |
存続期間 | 10年間(以降、10年ごとに更新) | 無期限 |
法域 | 商標法 | 商法 |
管轄 | 特許庁 | 法務局 |
専門 | 弁理士 | 司法書士 |
商業登記の際には、商標登録のような審査は行われません。同じ商号であっても、同一の住所でなければ、登録が認められます。つまり、同じ商号(会社名)が日本全国に複数存在することがあり得るということです。一方で、商標登録の場合は、住所の同一・相違に関わらず、同一商標は(同一又は類似の商品又は役務について) 同一・類似の商品又は役務においては登録できませんが、商号は、住所が違えば、同一の名称でも登記することができます。同じような会社名の乱立を避けるためにも、商号は商標登録しておいた方が安心・安全でしょう。
ただし、会社名を商標登録する際には、注意すべきことが数多くあります。例えば、他人の会社名を商標登録することは、原則として認められません。この他にも、たとえ会社名を登録したとしても、他人が自己の名称(商号)を普通に使用する場合は、商標権の効力が及ばない範囲として、権利行使ができない可能性があります。会社名の商標登録についてはケースバイケースですので、商標の知識と経験のある弁理士にご相談ください。
先ずは、登録したい商標を決めます。現在使用している商標でも構いませんし、これから使用予定の商標でも構いません。
商標を決めるにあたり注意すべきことは、その商標に識別力があるかどうかということです。識別力というのは、自分の商標と他人の商標とを区別する力のことです。つまり、その商標に「自他商品(役務)の識別機能」があるかどうか?ということが重要になります。
例えば、商品「りんご」について商標「アップル」は商品の普通名称なので、識別力が低いと判断されて登録が認められません(3条1項1号)。また、商品「りんご」について商標「美味しいりんご」も単なる商品の説明なので、識別力が低いと判断されて登録が認められません(3条1項3号)。この他にも、ローマ字1字、数字1字などの簡単すぎる商標や現元号なども、識別力が低い商標として登録が認められません。
この他に、下記の事項などにも注意してください。
次に、商標を使用する商品又は役務を決めます。例えば、プリンの商標の場合は、商品として第30類の「菓子」や「プリン」などを指定します。美容室の店名の場合は、役務として第44類の「美容」や「理容」などを指定します。
指定する商品又は役務の数に上限はありませんが、あまりに多くの商品又は役務を指定している場合は、「本当に使用するのか?」と、使用意思があるのか疑義が生ずるものとして拒絶理由が通知される場合があります。この場合は、商標の使用証拠を提出したり、事業契約書などの提出が必要となったりと、余計な手間がかかる場合があります。商品又は役務を指定は、必要の範囲内ですることをお勧めします。
商標登録から3年以内に使用を開始していない商品又は役務については、不使用取消審判で取消される可能性がありますので、ご注意ください。
商品又は役務の選択によっては、権利範囲が大きく異なる場合があります。権利範囲が広くて強い商標権を取得したい場合は、商標専門の弁理士に相談することをお勧めします。商品名や役務名が分からない場合や、どの分類に該当するのか分からない場合にも、お気軽にご相談ください。
商標調査は、特許庁に出願する前に、登録の可能性があるかどうかを事前に調査することをいいます。主に、下記の事項について調査を行います。
商標登録は早いもの勝ちなので、その商標が既に出願・登録されている場合は、登録が認められません。同一の商標のみならず、似ている商標が出願・登録されている場合でも、登録が認められません。
商標が似ているかどうかの判断(商標の類否判断)は難しいです。判断がつかない場合は、商標専門の弁理士にご相談ください。
自分で商標調査を行いたい方は、特許情報プラットフォーム(J-Plat-Pat)で、簡易検索することができます。特許情報プラットフォームとは、経済産業省所管の独立行政法人が運営する特許、実用新案、意匠、商標の公報などを無料で検索・照会可能なデータベースのことです。
特許情報プラットフォームを利用すれば、初心者の方でも簡単に商標検索することができます。トップページにある「特許・実用新案、意匠、商標の簡易検索」に、キーワードを入力するだけで該当する商標が検出されます。
詳細な商標調査を希望する場合は、弁理士にご相談ください。
商標調査の結果、登録の見込みがある場合は、出願書類を作成します。特許庁の書式に従い、商標登録願に必要事項を記載します。
代理人がいる場合は、代理人の欄を設けてください。商標登録を代理することができる者は、法律で決められています。商標登録出願の手続きなどは、通常は「弁理士」が代理人となります。「弁理士」の他に「弁護士」も代理人として手続きをすることができます。資格のない者が代理行為を行うことは、法律に違反しますのでご注意ください。
商標登録出願の際には、委任状は必要ありません。また、意見書を提出したり、補正書を提出する手続きについても委任状は必要ありません。出願中の住所・氏名変更や商標登録後の住所・氏名変更の際には、委任状が必要となります。
登録したい商標は、【商標登録を受けようとする商標】の欄に記載します。標準文字で出願する場合は、【商標登録を受けようとする商標】の欄の次に【標準文字】の欄を設けてください。
標準文字とは、特許庁長官があらかじめ定めた一定の文字書体のことです。商標が文字のみで構成される場合で、出願人が特別の態様について権利を要求をしないときは、標準文字として出願することができます。
使用できる標準文字は、下記の通りです。
下記のものは標準文字として認められていません。
商標登録願には、出願人の【住所又は居所】及び【氏名又は名称】を記載します。ここで注意すべきことは、この商標登録願の内容が公開されるということです。【住所又は居所】の欄に自宅の住所を書いてしまい、「公開するつもりはなかったのに、公開されてしまった」ということのないようにご注意ください。
記載漏れ、誤字、脱字など、書類に不備がないように慎重に出願書類を作成してください。商標登録願に不備がある場合は、特許庁長官から補正指令が通知される場合があります。補正指令が通知された場合は、期間内に補正を行うなどして対応してください。何ら応答がない場合は、出願が却下されることになります。
出願後は、原則として、商標を修正することはできません。商標中の「特許」「JIS」「JAS」などの付記的な部分を削除するような軽微な補正は可能ですが、色の変更、書体の変更、文字の追加・削除などは一切認められません。途中で商標が修正された場合は、再度出願し直す必要があります。
商品又は役務については、指定した商品又は役務を削除したり、減縮する補正(例えば、「果物」を「リンゴ」に減縮する補正)は認められますが、商品又は役務を追加・拡張することは認められません。商品又は役務を追加・拡張したい場合は、再度出願し直す必要があります
商標登録願は、書面を特許庁に郵送で提出するとができます。また、オンライン上で電子提出することもできます。最近では、ほとんどの出願が電子提出されています。オンライン出願を行うためには、電子証明書を購入し、特許庁へ氏名や住所を登録するなど、様々な事前準備が必要となります。
書面で郵送する場合は、電子化手数料が必要となります。電子化手数料とは、紙で提出された内容を、電子化するための手数料のことです。
出願が完了した後は、順次、審査が行われます。審査の結果、登録が認められた場合は、登録査定が通知されます。登録が認められない場合は、拒絶理由通知が届きます。
登録査定が通知されたら、登録料を納付します。登録料の納付から1週間程度で商標登録(設定登録)がなされます。これで商標登録の完了です。
登録査定が通知されて安心していてはいけません。期間内に、忘れずに登録料を支払ってください。登録料の納付がない場合、その出願は却下されてしまいます。
拒絶理由通知とは、「審査の結果、登録できない理由があります。期間内に何らかの対応をとってください」という中間報告のようなものです。出願人は、指定された期間内に、拒絶理由を解消するための対応をとります。例えば、下記のような対応策をとることができます。
拒絶理由が通知されたからといって、諦めてはいけせん。簡単な補正で登録が認められたり、意見書の提出により登録が認められたりする可能性があります。ご自身での対応が難しい場合は、専門家にご相談ください。
出願から商標登録(設定登録)までは、6ヶ月~1年程度かかります。
登録を急いでいる場合は、早期審査の制度を利用することができます。早期審査を利用すれば、最短で、出願から1~3ヶ月程度で登録することができます。
ただし、早期審査を利用するためには、いくつかの条件を満たしている必要があります。早期審査の条件を満たしている場合は、「早期審査に関する事情説明書」を提出して、早期審査の申請を行います。提出は、出願日以降いつでも可能です。
早期審査の利用の有無によっては、商品又は役務の指定の仕方が変わってくる可能性もありますので、早期審査を利用したい場合は、事前に(出願前に)お知らせください。
商標権の効力は、商標登録の日から発生します。商標法25条には「商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する」と規定されています。この通り、商標権者は、登録商標を指定商品又は役務の範囲内で専有し、独占排他的に使用することができます。
商標権の効力は登録により発生するのですが、出願してから登録されるまでの間(商標登録の日前)であっても、出願の商標を保護する方法があります。他人が出願の商標を使用することにより生じた損失額の支払いを請求(金銭的請求)ができる場合があります。
商標権の効力は、日本の国内のみで有効です。中国や韓国、アメリカなどに商品を輸出するなどして、海外でも商標を使用する場合は、その国ごとに商標登録する必要があります。
海外で商標登録したい場合は、その国ごとに直接出願する方法とマドプロ出願で一括して出願する方法があります。直接出願とマドプロ出願のフローチャートを
権利の存続期間は、商標登録の日から10年間です。10年ごとに何度でも更新することができるので、半永久的に権利を存続させることができます。
下記の場合には、商標権が消滅します。一度消滅した商標権は、原則として、回復させることができません。
差止請求とは、自分の商標権を侵害している者に対して「これは私の登録商標です。使用しないでください。」と、その使用の差止を請求することをいいます。
商標権の侵害は、具体的に下記のような行為のことをいいます。このような場合に、商標権者は、侵害者に対して差止請求をすることができます。
商標権の侵害については、侵害者の故意又は過失は問われません。たとえ登録商標だとは知らずに使用している場合であっても、その使用者に対して、差止請求権することができます。登録商標は、特許庁の商標公報で公開されているので、商標を使用する者は公報で商標登録を確認する注意責任があるのです。
差止請求をする際には、下記の点に注意してください。
侵害者の会社名や住所などを特定します。オンラインショップなどで商標が使用されている場合などは、侵害者が特定できないこともありますが、相手方が特定できなければ、連絡を取ることができないので、なるべく相手方を特定してください。
相手方の行為が、侵害に該当するかどうかを確認してください。第一に、商標が同一又は類似しているかどうか。第二に、商品又は役務が同一又は類似しているかどうか、を確認します。商標が同じでも、商品又は役務が異なれば、商標権の侵害には該当しません。
すぐに使用を止めてくれそうな場合は、先ずは電話やメールで「あなたの商標の使用が、私の商標権を侵害しています。商標の使用を止めてもらえませんか」などと連絡します。電話の場合は、商標権の登録番号や侵害行為について、聞き間違いが生ずる可能性があるので、メールの方がよいでしょう。
なかなか使用を止めてくれない場合や悪質な場合は、「内容証明」郵便で警告書を送ることもできます。警告書には、商標権の内容、侵害に該当している旨、使用を止めてほしい旨などを記載します。
商標登録をせずに商標を使用している場合、ある日、突然、「あなたの商標の使用は、商標権の侵害行為に該当しています」という警告文が送られてくるかもしれません。その際には、下記の点に注意して冷静に対応してください。
自分の商標の使用が、相手方の商標権を侵害しているかどうかを検討します。商品又は役務が異なる場合や、商標が非類似の場合もありますので、先ずは、侵害しているかどうかを確認してください。商標権の侵害に該当しない場合は、その旨を相手方に主張します。侵害に該当しているかどうか分からない場合は、弁理士にご相談ください。
あなたの使用が、商標権の侵害に該当している場合は、警告書に記載されている商標権の内容を入念に調べましょう。商標権が、有効なものかどうかを確認します。例えば、「無効理由がないかどうか?」「不使用の商品又は役務がないかどうか?」などを確認します。無効理由がある場合や、不使用の場合は、商標登録を無効にしたり、取り消したりすることができます。また、抗弁(反論)することができます。
無効理由がある場合は、「あなたの商標登録には無効理由(不備)がありますよ。」と主張して、無効の抗弁を行うことができます。この抗弁が認められた場合は、商標を継続して使用できる可能性があります。
先使用権を有している場合は、先使用権の抗弁を行うことができます。この抗弁が認められた場合は、商標を継続して使用できる可能性があります。
抗弁をしない(できない)場合は、すやかに使用を止めた方がよいでしょう。そのまま使用し続けていると、損害賠償請求などをされることもあります。たとえ大切な商標であったとしても、商標を変更する必要があります。
商標の使用を継続したい場合は、ライセンス許諾(専用使用権、通常使用権)の交渉をすることができます。また、商標権を譲渡してもらうように交渉することもできます。
移転とは、大きく分けて「譲渡」と「相続その他の一般承継」の2種類に分かれます。「譲渡」は、財産や権利などを有償無償に関わらず、譲り渡すことをいいます。「相続その他の一般承継」とは、相続や会社の合併のように、権利・義務の一切を承継することをいいます。
商標権も移転することができます。移転された場合は、「譲渡」であれ「相続その他の一般承継」であれ、特許庁にその旨を届け出る必要があります。
商標権は、他人に譲渡できます。商標権ごとに譲渡することもできますし、指定商品又は役務の一部を分割して譲渡することもできます。商標権の譲渡があった場合は、必ず、特許庁に届け出る必要があります。当事者間のみでの契約だけだと、移転の効力は生じません。特許庁の商標原簿に登録されることにより、有効になります。
地域団体商標の商標権など、譲渡が認められていない場合もありますので、ご注意ください。
権利者である会社が合併により解散して、商標権が合併後の会社に承継された場合も、その旨を特許庁に届け出なければなりません。その際には、「合併の事実の記載ある承継人の登記事項証明書」又は「被承継人の閉鎖登記事項証明書」の添付が必要となります。
相続の場合も、承継人は、遅滞なく、その旨を特許庁に届け出なければなりません。その際には、「被相続人の死亡の事実を証明する書面」と「相続人であることを証明する書面」の添付が必要となります。
商標権の移転に際して、よく質問されるのが「新しい権利者に商標登録証は届くのですか?」ということです。新しい権利者には、商標登録証は届きません。商標登録証は、商標登録が完了した時に記念として発行される賞状のようなものです。権利者証のようなものではありません。登録後に名義人が変更されても、商標登録証は発行されません。
住所が変わった場合は、その旨を特許庁に届け出る必要があります。すみやかに「登録名義人の表示変更登録申請書」を特許庁に提出してください。住所変更の届出をしていない場合は、例えば、商標登録に無効審判が請求された際などに、その知らせの郵便物が届かなくなるのでご注意ください。
氏名が変わった場合も、その届け出が必要です。すみやかに「登録名義人の表示変更登録申請書」を特許庁に提出してください。
住所と氏名の両方が変わった場合には、申請書を一枚にまとめて手続することができます。また、商標権者の住所・氏名に変更があった場合も、変更後の内容の商標登録証は発行されません。
商標登録は、10年ごとに更新する必要があります。更新の回数は無制限です。更新を繰り返すことにより、半永久的に商標権を存続させることができます。
更新については、特許庁からは何ら通知は届きません。自分で期限管理をするか、特許商標事務所に期限管理を依頼して、更新を忘れないでください。更新時期を過ぎてしまうと、商標権は消滅します。
更新の時期は、商標権の満了前6ヶ月から満了日までです。この時期に更新できなかった場合でも、満了日から6ヶ月以内であれば、更新することができます。ただし、更新料と同額の割増料金がかかります。
上記の期間内(満了日から6ヶ月以内)に更新することができなかった場合でも、諦めてはいけません。正当な理由がある場合は、商標権が回復する可能性があります。正当な理由がある場合は、その理由がなくなった日から2ヵ月以内で、期間経過が6ヵ月以内であれば更新することができます。ただし、更新料と同額の割増料金がかかります。
「商標権存続期間更新登録申」を特許庁に提出します。更新の際に、審査は行われません。申請書を提出して更新登録料を納付すれば、自動的に更新されます。
商標調査は自ら行うこともできます。自分で調査を行う場合は、もちろん費用は無料です。ただし、自分で調査した場合は、調査漏れなどがあり、結果的に出願費用が無駄になってしまったり、拒絶理由が通知されて意見書や補正書が必要となり、余計な費用がかかってしまうこともあります。
出願前に、事前にしっかりした調査を行いたい場合は、特許商標事務所に調査を依頼した方が安心でしょう。弊所の場合は、商標調査を21,600円で承っております。※ 図形商標の調査、音響商標の調査などは調査費用が異なりますので、お問い合わせください。
商標登録の出願手続きをご依頼の場合は、調査費用はかかりません。
出願の際には、特許庁に対して印紙代(出願料)を納付する必要があります。費用は、区分の数によって異なります。例えば、第3類「化粧品」と第35類「化粧品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,」を指定した場合は、2区分となります。
1区分内の商品又は役務の数は、1個でも22個でも、何個でも費用は変わりません。例えば、第3類「化粧品」でも第3類「つけまつ毛用接着剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つけづめ,つけまつ毛」でも、どちらも1区分分の費用となります。
3,400円+(区分数×8,600円)
弊所の出願手数料については、商標登録出願必要費用をご覧ください。
登録の際には、特許庁に対して印紙代(登録料)を納付する必要があります。費用は、区分の数によって異なります。
登録費用は10年分を一括で納付することもできますが、前半5年分と後半5年分に分割して納付することもできます。ライフサイクルの短い商品又はサービスに使用する商標、そもそも短期間しか使用しない商標、近い将来商標を変更する可能性がある場合、初期投資を抑えたい場合などは、5年分の分割納付が活用できますね。
【10年分を一括納付】区分数×32,900円
【前半5年分と後半5年分を分割納付】区分数×17,200円
10年分を一括して納付した方が、割安です。長く使用する予定のある商標については、一括納付の方がお得です。年間あたり、たったの3,290円で商標権が維持できるのは、商標登録していない場合のリスクを考えると、とても安いですね。
ただし、10年分を一括して納付した場合で、途中の5年目で商標を使用しなくなった場合でも、納付した登録料は返還されません。5年程度しか使用する予定がない場合は、分割納付をお勧めします。
更新の際には、特許庁に対して印紙代(更新料)を納付する必要があります。費用は、区分の数によって異なります。更新の際にも、一括納付か分割納付を選ぶことができます。更新料は、登録料に比べて少し割高になっています。特許料の場合は、年数を追うごとに、金額が高くなっていきますが、商標の更新料は10年目も20年目も30年目も、金額は同じです。
【10年分を一括納付】区分数×43,600円
【前半5年分と後半5年分を分割納付】区分数×22,800円
商標登録された商標のことを「登録商標」といいます。