「天使のチョコリング」という商標が登録されました。指定商品は【第30類】の「チョコレートを加味してなるリング状の菓子及びパン」です。
この商標登録について、無効審判が請求されました。請求の理由は、本件商標の「天使」の部分が、下記の【引用1】【引用2】と、「外観」「称呼」「観念」のいずれにおいても同一又は類似するとして、商標法4条1項11号の無効理由に該当するとして審判が請求されました。
引用1 引用2原告は、上記【引用1】【引用2】の権利者である「森永製菓株式会社」です。
本件商標と【引用1】【引用2】を比較してみますと、「天使のチョコリング」について、「チョコリング」部分は、商品の説明をしているものであり、識別力はありません。となると識別力を発揮する部分は「天使」の部分となりますので、【引用1】【引用2】と「称呼」「観念」「外観」が同一又は類似であり、商標全体として、本件商標と【引用1】【引用2】は類似していると言えますね。
確かに、チョコレート菓子について「天使」というと、「森永」「エンゼル(天使)マーク」などを思い浮かべる人も多いでしょう。
審判の結果、商標登録の無効にすべき旨の審決が下されました。
無効審決の結果を受けて、「天使のチョコリング」の権利者である、当事者(以下、甲)は、審決取消訴訟を提起しました。
審決取消訴訟とは、無効審決の謄本の送達があった日から30日以内に、東京高等裁判所に「審決の取り消しを求めて」行う訴訟のことをいいます。
甲の主張は、以下の通りです。
以上の理由から、「天使」には出所識別標識として強く支配的な印象が与えられるものではない、と主張しました。また、「天使のチョコリング」を一体として判断すべきであり、「天使」の部分だけをを抽出し、この部分だけを他の商標と比較して商標の類否判断をすることは許されない、と主張しました。
これに対して裁判所は、本件商標の「天使のチョコリング」のうち、「チョコリング」の部分は識別力が低いものと判断し、「天使」の部分は識別力あるものとし、また、森永製菓株式会社が、長年にわたり「天使」を使用、保護していることを認め、
「取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すると,本件商標を,本件引用商標が指定商品として含む「チョコレートを加味してなるリング状の菓子及びパン」に使用した場合に,商品の出所につき誤認混同されるおそれがあるということができる。」
と判断し、審決の判断に誤りはないとして、甲の請求を棄却しました。これにより無効審決が確定し、「天使のチョコリング」の商標権は消滅しました。
他人の登録商標と同一又は類似の文字に、「識別力の低い文字」を結合させた商標の場合、その登録商標の周知度に関わらず、登録が認められないこともありますね。トラブルを避けるためにも、出願の前に、入念に調査を行っておいた方が安全ですね。