今回似ていると判断された商標は下記の通りです。
確かに、「フランクミウラ」と「フランクミュラー」は、称呼が似ていますね。
全体の語調,語感が近似し,相紛らわしい類似の商標である。さらに,本件商標は,著名ブランドとしての「フランクミュラー」の観念を想起させる場合があることから,著名ブランドとしての「フランクミュラー」の観念を生じる引用商標とは,観念上,類似する。(…中略…)以上によれば,本件商標と引用商標とは,外観において相違があるものの,称呼及び観念において類似し,かつ,その指定商品は類似するものであるから,両商標は,類似するというのが相当であり,本件商標は,商標法4条1項11号に該当する。
本件商標と被告使用商標とは,類似する商標であり,かつ,本件商標の指定商品は,「時計」を含むものである。したがって,本件商標は,商標法4条1項10号に該当する。
被告使用商標は,被告の業務に係る商品である「時計」に使用され,本件商標の商標登録出願時及び登録査定時において既に著名であったこと,本件商標が被告使用商標と類似する商標であること,本件商標の指定商品は,被告の業務に係る商品「時計」を含み,かつ,それ以外の指定商品である「宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,キーホルダー,身飾品」と商品「時計」とは,共にデザイン,ブランド,装飾性が重視される商品であり,その販売場所,需要者を共通にすることも多い,近似した商品といえることに照らすと,本件商標は,これをその指定商品について使用した場合には,他人の業務に係る商品と混同を生じるおそれのある商標に該当すると認められるから,仮に本件商標が商標法4条1項10号及び同項11号に該当しないとしても,同項15号に該当する。
原告は,被告使用商標が被告商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることや,本件商標が被告使用商標のパロディであることを認識しながら,時計等を指定商品等とする本件商標の商標登録出願を行い,実際に本件商標を使用して,被告商品を模した商品を製造,販売しているから,本件商標は,原告が,不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認められ,仮に本件商標が商標法4条1項10号,同項11号及び同項15号に該当しないとしても,同項19号に該当する。
以上のとおり、当該商標登録は、10号、11号、15号、19号違反に基づき、無効にすべきものであるとの審決が下されました。この審決に対して、「株式会社ディンクス」は審決取消訴訟を提起しました。
「フランク三浦」と引用商標1の称呼は、類似する。
「フランク三浦」の外観は、カタカナと漢字の組み合わせであるのに対して、引用商標1の外観はカタカナのみであり、その外観において明確に区別し得る。
「フランク三浦」からは「日本人ないしは日本と関連を有する人物」との観念が生ずるのに対して、引用商標1からは「海外の高級ブランドである」との観念が生じる。よって両者の観念は大きく相違する。
以上のことから、「フランク三浦」は引用商標1と類似しないと判断されました。また、引用商標2、3とも類似するとは言えないとして、4条1項11号に該当するとの審決には誤りがあると判断しました。
本件商標は,引用商標1及び2のいずれとも類似するとはいえない商標であることは前記1のとおりであるから,本件商標は,被告使用商標のいずれとも類似するとはいえない。したがって,本件商標は商標法4条1項10号に該当するものとは認められず,本件商標は商標法4条1項10号に該当するとした本件審決の判断には誤りがあるから,原告主張の取消事由2は理由がある。
本件商標が商標法4条1項15号に該当するか否かは,飽くまで本件商標が同号所定の要件を満たすかどうかによって判断されるべきものであり,原告商品が被告商品のパロディに該当するか否かによって判断されるものではない。 (…中略…) 商標法4条1項15号は,飽くまで同号に該当する商標の登録を許さないことにより,周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止するものであるから,抽象的に商標の出所の不鮮明化や,商標の稀釈化が生じると主張するのみでは,本件商標が同号に該当することを根拠付ける主張となるものではない。 (…中略…)本件商標は商標法4条1項15号に該当するものとは認められない。したがって,本件商標は商標法4条1項15号に該当するとした本件審決の判断には誤りがあるから,原告主張の取消事由3は理由がある。
本件商標は,被告使用商標のいずれとも類似するとはいえないから,本件商標が不正の目的をもって使用するものに該当するかどうかについて判断するまでもなく,本件商標は商標法4条1項19号に該当するものとは認められない。したがって,本件商標は商標法4条1項19号に該当するとした本件審決の判断には誤りがあるから,原告主張の取消事由4は理由がある。
以上のとおり、審決を取消すべき旨の判決が下されました。この判決に対して、「エフエムティ―エム ディストリビュ―ションリミテッド」は最高裁判所に上告しました。
最高裁は、「エフエムティ―エム ディストリビュ―ションリミテッド」の上告を退けました。これにより、知財高裁の判決が確定しまし、「フランク三浦」の登録は維持されることになりました。