商標登録出願をする前に、商標調査をした方がよいでしょうか?
答えはYESです。
商標調査をするメリットは、数多くあります。
事前調査をすることにより、登録の可能性を高めてから出願に臨むことができます。例えば、既に登録されている商標と同一の商標の場合、そのまま出願してしまえば、拒絶査定になってしまいます。事前調査をすることにより、拒絶査定になる可能性の高い商標については、その商標を修正・変更するなどして、登録の可能性を高めて出願に臨むことができます。
登録が認められなかった場合でも、一度納付した出願費用は戻ってきません。せっかく出願したのに、拒絶査定になってしまったら、出願費用が無駄になってしまいます。事前調査を行うことにより、登録の可能性を高めてから出願すれば、出願費用が無駄にならない可能性が高まります。
審査の途中で拒絶理由が通知された場合は、意見書や補正書などを提出して対応する必要があります。拒絶理由がない場合は4~6ヶ月程度で登録が認められるのですが、拒絶理由が通知された場合は、意見書や補正書を作成する時間がかかり、また、再度審査が行われるのための時間もかかるので、登録までに1年程度かかってしまう可能性があります。事前調査を行うことにより、登録の可能性を高めてから出願すれば、拒絶理由が通知される可能性が低くなり、登録までスムーズに行うことができます。
審査の途中で拒絶理由が通知された場合は、意見書や補正書などを提出して対応する必要があります。弁理士に依頼した場合は、意見書作成費用や補正書作成費用が余計にかかってしまいます。また、自分で意見書や補正書を作成する場合でも、かなりの手間がかかるでしょう。事前調査を行うことにより、登録の可能性を高めてから出願すれば、拒絶理由が通知される可能性が低くなり、意見書作成などの手間と費用をかけずにすむ可能性が高まります。
もちろん、事前に商標調査をしたからといって、確実に登録になるわけではありません。最終的な判断は、審査官にゆだねられます。しかし、事前調査をすることにより、多少なりとも不登録理由を排除して、登録の可能性を高めた上で出願することができます。これにより、よりスムーズな登録が望めます。
商標調査を行った場合と、商標調査を行わずに出願した場合とでは、その結果が大きく異なることがあります。例えば、既に登録されている商標「ABC」と似ている商標「abc」を出願しようとした場合、出願前に商標調査を行っていれば、「「abc」を登録できる可能性は低いな」と判断して、別の商標に変えたり、「abc」の前後に文字を付したり、図案化・ロゴ化したりなどの工夫をした上で、出願することができます。このように事前に対応することにより、登録商標「ABC」を回避して、登録できる可能性が高まります。
一方で、事前に商標調査を行わずに、そのまま「abc」の出願をした場合には、審査の段階で「ABC」と似ているという拒絶理由通知が届く可能性が高いです。拒絶理由が通知された場合は、意見書や補正書で対応する必要があり、費用と時間が余計にかかってしまいます。また、意見書や補正書で対応しても、拒絶理由が覆らない場合には拒絶査定になってしまいます。そうすると、出願費用や意見書費用などが無駄になってしまいます。別の商標に変えて出願するとしても、また一からやり直しになってしまうので、さらに費用と時間がかかってしまいます。
一度出願した商標は、原則、補正をすることができません。商標の色彩を変えたり、商標の書体を変えたり、商標の一部を変更・削除したり、商標に文字・図形・記号などを追加するような補正は、要旨の変更であるとして認められていません。
例外として、出願商標の補正が認められる場合もあります。商標の付記的部分(特許、意匠、商標、JAS、JIS、エコマークなどの文字)を削除することは、要旨の変更ではないとして補正が認められています。
事前に調査しておけば良かったのに、ということはよくあります。弊所では、出願をご依頼のお客様には無料で商標調査を行っております。調査の段階で、登録の見込みが低い場合には、「どのように修正すれば登録の可能性が高まるのか」などのアドバイスをさせていただいております。こちらのお問い合わせページから、お気軽にお問合せください。
商標調査は、専門家に依頼した方がよいでしょうか?
答えはYESです。
登録できない理由(不登録理由)は、商標法15条に規定されています。多くの不登録理由がある中で、登録できる可能性があるかどうかの判断は、商標の専門家でなければ難しい場合もあります。
例えば商標調査は、主に、下記のような観点について行います。
最も多く通知される拒絶理由の一つが、識別力の欠如です。識別力については、商標法3条1項1号~6号に規定されています。
例えば、商品「りんご」について商標「赤いリンゴ」は、識別力がないと判断できるかもしれません。しかし、「朱いリンゴ」はどうでしょうか?「紅いリンゴ」はどうでしょうか?「アカイリンゴ」はどうでしょうか?このような判断は難しいです。また、商品「しょうが入りの茶」について「ぽかぽかしょうが」はどうでしょうか?識別力がないと判断する人も多いかもしれませんね。判断が難しいところですが、実は「ぽかぽかしょうが」は商標登録されています(登録5483517)。
識別力の有無の判断は、簡単なようで、実は難しいのです。識別力がないと思って、出願を諦めたのに、他人がその商標を出願して、登録が認められてしまうこともあるのです。自分で識別力がないと判断して諦める前に、専門家に相談してみてください。
最も多く通知される拒絶理由の一つが、他人の登録・出願商標と似ているというものです(商標法4条1項11号)。完全同一の場合は判断が簡単ですが、類似の場合は判断が難しいです。
商標の類似は、両商標の「外観(見た目)」「称呼(呼び方)」「観念(意味)」のそれぞれの要素を総合的に考察して判断します。その他にも、併存登録例や審決・判決例などをもとに、商標の類似判断を行います。例え「称呼」が似ていたとしても「外観」や「観念」が大きく異なる場合は、登録が認められる場合もあります。
「これは似ているな」と判断した場合でも、実は登録できる可能性もゼロではない場合もあります。意見書で覆る可能性もありますし、拒絶査定不服審判で登録が認めれる可能性もあります。その辺りの微妙な判断は難しいです。
また、たとえ類似していたとしても、その先の出願自体が拒絶されてしまったり、先の登録が消滅してしまった場合には、登録が認められる可能性があります。商標調査においては、審査状況や商標登録の状況なども考慮して判断することが望まれます。商標調査の段階での、類似・非類似の判断は難しいので、専門家の意見を参考にするのがよいでしょう。