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商標登録までの三段階【3ステップ】

商標登録をするためには、大きく分けて3段階のステップを踏むことになります。

決める → 調査する → 出願する

基本的には、この3ステップで商標登録ができます。

商標調査を行わずに、「決める」→「出願する」の2ステップで商標登録することもできます。しかし事前調査を行わずに出願した場合は、審査段階で拒絶理由通知を受ける可能性が高くなり、余計な費用や時間がかかってしまいます。事前に商標調査をしていれば、よりスムーズに商標登録を行うことができます。商標調査の重要性については、なぜ商標の事前調査が必要なのか?のページをご覧ください。

さて、3ステップで簡単そうにみえる商標登録ですが、出願の仕方によっては、権利範囲が大きく異なることがあります。誰がやっても同じ結果、同じ権利範囲になるとは限りません。商標や商品又は役務の選択によって権利範囲が変わってくるのです。

商標登録は、登録できたらそれで終わりというわけではありません。登録してからが重要なのです。他人の無断使用に対して権利行使したり、他人に使用許諾をしたりして、商標権を活用するためには、強くて権利範囲の広い商標権の方が有利です。広範囲で強い商標権を取得するためには、出願前の事前準備「決める」→「調査する」の段階で、しっかり検討することが重要となってきます。

1ステップ【決める】

商標を決める

先ずは、商標を決めます。商標は、著作物とは異なり創作性などの要件は求められません。また、発明とも異なり新規性や進歩性なども必要ありません。デザイン性や芸術性なども求められないので、ある意味気軽に決めることができます。

商標を決める際の一番のポイントは、「その商標に識別力があるかどうか?」ということです。識別力というのは、他人の商品と自分の商品を区別する力のことです。商標法3条1項には、下

記のような商標は識別力がないものとして登録が認められない旨が定められています。
  • 普通名称のみからなる商標
  • 慣用商標
  • 商品の産地、販売地等又は役務の提供の場所、質等のみからなる商標
  • ありふれた氏又は名称のみからなる商標
  • 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標
  • その他、識別力がない商標

普通名称のみからなる商標

普通名称のみからなる商標というのは、例えば、商品「プリン」について、商標名がその普通名称の「プリン」だと、どこの会社の商品なのか、その出所を識別する力を有していません。このような普通名称のみからなる商標は登録が認められません。一方、商品「プリン」に「プッチンプリン(第5943079号)」と付されていたら、それは「江崎グリコ株式会社」の商品だなと識別することができますよね。この識別力の有無が、商標を決める上で、先ず留意しなければならないことです。

極めて簡単で、かつ、ありふれた標章

極めて簡単で、かつ、ありふれた標章というのは、その構成が極めて簡単なものや、その標章が一般的に使用されているものをいいます。例えば、下記のような標章が、「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章」に該当します。

  • 数字について

    数字は、原則として、「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章」に該当する。

  • ローマ字について
    1. ローマ字の1字又は2字からなるもの
    2. ローマ字の2字を「-」で連結したもの
    3. ローマ字の1字又は2字に「Co.」、「Ltd.」などを付したもの。
      ※ただし「Co.」、「Ltd.」が、「Company」、「Limited」と認められる場合に限る。
  • 仮名文字について
    1. 仮名文字1字
    2. 仮名文字のうち、ローマ字の1字の音を表示したものと認識されるもの
    3. 仮名文字のうち、ローマ字の2字の音を表示したものと認識されるもののうち、そのローマ字が商品又は役務の記号又は符号として一般的に使用されるもの
    4. 仮名文字のうち、1桁又は2桁の数字から生ずる音を表示したものと認識されるもの
    5. 仮名文字のうち、3桁の数字から通常生ずる音を表示したものと認識されるもの
  • ローマ字又は数字から生ずる音を併記したものについて
    1. ローマ字の1字に、その音を仮名文字で併記したもの
    2. 1桁又は2桁の数字に、それから生ずる音を併記したもの
  • ローマ字と数字を組み合わせたものについて
    1. ローマ字の1字又は2字の次に数字を組み合わせたもの
    2. 数字の次にローマ字の1字又は2字を組み合わせたもの
  • 図形について
    • 1本の直線、波線、輪郭として一般的に用いられる△、□、○、◇、盾等の図形
  • 立体的形状について
    • 球、立方体、直方体、円柱、三角柱等の立体的形状
  • 簡単な輪郭内に記したものについて
    • 簡単な輪郭内に、1~5までに該当するものを記したもの

3条1項1号~6号の要件について、詳しくは商標登録の要件をご覧いただき、識別力の有無に注意しながら商標を決めましょう。

商品・役務を決める

類似商品・役務審査基準(国際分類)

次に、商標を使用する商品又は役務を決めます。商標登録は、商標だけを登録するものではありません。その権利範囲として、商標を使用する商品又は役務を指定しなければなりません。

商品又は役務は、「類似商品・役務審査基準(国際分類)」に例示列挙されています。国際分類には、それぞれの商品又は役務が各区分(第1~45類)に分類されているので、自分が指定したい商品又は役務がどの区分に該当するのかを確認することができます。

国際分類に記載のない商品・役務について

国際分類に記載されている商品又は役務は、あくまで例示的に列挙されているものであり、ありとあらゆる商品又は役務を全て網羅しているわけではありません。国際分類に記載されていない商品又は役務についても出願することができます。ただし、商品又は役務が不明確な場合は、審査の段階で拒絶理由が通知されてしまいます。拒絶理由が通知された場合は、その商品又は役務についての詳細を説明をするか、商品名又は役務名を補正するなど、なんらかの対応をする必要があります。

過去に商標登録されたことがない新しい商品又は役務の場合は、できる限り具体的に商品名を記載することをお勧めします。拒絶理由が通知されてから、審査官に問い合わせをして補正をするのがよいでしょう。「おそらく、この商品かな」などと曖昧なまま出願した場合、仮に登録になったとしても、全く見当違いな権利範囲となってしまう可能性もあるので、ご注意ください。また将来、マドプロ出願で海外でも商標登録したい場合などは、特に指定商品又は役務の検討が重要となります。「本当に適切な商品又は役務なのか?」「範囲権利に隙はないのか?」「権利行使しやすいのか?」など、商品又は役務は慎重に決めましょう。

商品又は役務の数について

商標登録は、区分の数によって料金が異なります。区分数が多ければ多いほど費用がかかります。その点、1区分内の商品又は役務の数に上限はありません。1区分内であれば、1個の商品を指定した場合も、20個の商品を指定した場合も、費用は変わりません。

例えば下記の指定は、どちらも1区分なので費用は変わりません。パターンAとBでは商品の数が違いますが、費用は同じです。

パターンA
【第3類】「化粧品」
パターンB
【第3類】「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,つけまつ毛用接着剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つけづめ,つけまつ毛」

下記の指定の場合は、パターンAは1区分の費用ですが、パターンBは2区分の費用になります。単純に商品の数でいうと、パターンBの方が少ないのですが、費用は多めにかかってしまいます。

パターンA
【第3類】「つけまつ毛用接着剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つけづめ,つけまつ毛」
パターンB
【第3類】「化粧品」 【第5類】「サプリメント」

費用が変わらないのであれば、1区分内にできるだけ多くの商品又は役務を指定しておいた方が得だとも考えられますが、あまりに多くの商品又は役務を指定した場合は、審査の段階で「本当に使用するのですか?」という拒絶理由が通知されることがあります。そうすると、商標の使用証拠を提出したり、事業計画書などを提出したりと手間と時間がかかってしまいます。また、登録後には不使用取消審判で取消される可能性がありますので注意が必要です。やみくもに多くの商品又は役務を指定するのではなく、将来の事業計画などを見据えた上で、必要の範囲内で指定することをお勧めします。

2ステップ【調査する】

商標調査をする

出願料を無駄にしないためにも、商標調査は重要です。なかには商標調査をせずに出願する人もいますが、私自身の個人的な意見としては「商標調査は、商標登録をする上で最も重要なプロセスである」と考えます。商標調査は、出願から登録までをスムーズにするだけでなく、ライバル他社の動向や、どのような商標が登録されているかなど知ることができます。また他人の商標登録を見て、どのような商品又は役務を指定しているかなど、自分の出願の参考にすることもできます。

自分で簡易調査をする

最近では、弁理士などの代理人をたてずに、自分で商標登録するケースも増えてきています。その場合、商標調査を行わずに出願するケースも多々あるようです。確かに、商標調査を省けば出願までの時間を短縮することができるかもしれませんが、その分拒絶理由が通知される可能性が高くなるので、逆に登録までに時間がかかってしまうこともあります。拒絶理由を回避して、登録の可能性を高めた上で出願したいのであれば、ちゃんと調査を行った方がよいでしょう。

簡易的な商標調査は、商標法の知識がない人や商標登録の経験がない初心者でも、「特許情報プラットフォーム」から簡単にすることができます。トップページの「特許・実用新案、意匠、商標の簡易検索」から、調べたい商標を入力して、検索ボタンを押すだけで、簡単に調査することができます。

「特許情報プラットフォーム」を使用した商標調査では、特に4条1項11号の「先願先登録」の要件についてを調査します。調査結果の判断方法は、以下の3点に注意しながら考察しましょう。

  • 商品又は役務の範囲かどうか?
    先ずは、商品又は役務の範囲が同一又は類似かどうかを検討してください。非類似の商品又は役務の場合は、たとえ同じ商標であっても、登録の障害となる可能性はありません。
  • 同一商標かどうか?
    商標が同一かどうかを検討してください。既に登録されている商標と同一の商標は、登録が認められません。色のみが違う場合や、書体のみが違う場合は、同一商標ではありません。色や書体のみの違いは、下記の類似商標になります。
  • 類似商標かどうか?
    商標が似ているかどうかを検討してください。既に登録されている商標と似ている商標は、登録が認められません。

弁理士に調査を依頼する

より精密な商標調査を望むのであれば、弁理士に依頼した方がよいでしょう。登録商標と似ているかどうかの判断は、経験と知識が必要となります。判例や審決例などの知識を有した商標専門の弁理士に、本格的な調査を依頼した方がよいでしょう。

弊所の場合は、調査のみご依頼の場合は、下記の費用がかかります。 ただし、出願までご依頼いただいた場合は、出願費用から調査費用を引かせていただきますので、実質無料で商標調査をすることが可能です

写真

調査をご依頼の場合は、お問い合わせページから、お気軽にご依頼ください。

3ステップ【出願する】

出願書類を作成する

出願書類を作成します。具体的には、特許庁の様式に沿って「商標登録願」を作成します。出願書類には、出願人の住所(居所)や氏名(名称)を記載したり、登録したい商標、指定商品又は役務などを記載します。

標準文字の場合

【商標登録を受けようとする商標】の欄に商標を記載して、その下に【標準文字】の欄を設けてください。30文字を超える商標、スペースの連続を含む商標などは、標準文字として認められないのでご注意ください。

  • 【商標登録を受けようとする商標】○○○○
    【標準文字】

立体商標の場合

【商標登録を受けようとする商標】の欄の次に【立体商標】の欄を記載してください。また、立体商標を一又は異なる二以上の方向から表示した図又は写真により、立体的形状の構成及び態様を明確する必要があります。

写真

音響商標の場合

【商標登録を受けようとする商標】の欄の次に【音商標】の欄を記載してください。また、その次に【商標の詳細な説明】の欄を設けて、説明を記載することもできます。音の商標の音源については、提出物件の目録として「MP3形式で録音したCD-R又はDVD-R」を添付します。オンライン出願の場合は、下記の例のように記載した商標登録願をオンラインで出願し、その手続きをした日から3日以内に、商標登録を受けようとする商標を記録した光ディスクを添付した「手続補足書」を書面で提出する必要があります。

  • 【提出物件の目録】
    【物件名】商標法第5条第4項の物件 1
    【提出物件の特記事項】手続補足書により提出します。

その他の出願の場合

出願する商標のタイプに合わせて、【商標登録を受けようとする商標】の欄の次に【動き商標】【ホログラム商標】【色彩のみからなる商標】【位置商標】などと記載します。また、その次に【商標の詳細な説明】の欄を設けて、説明を記載します。

出願する

出願書類を作成したら、それを特許庁に提出します。提出の方法は、書類を郵便で送ることもできますし、自ら特許庁に持参することもできます。最近では、自宅や会社にいながらして、簡単に電子出願するケースが増えてきているようです。

書類で提出する場合は、書面に記載された内容を電子化するための手数料(電子化手数料)がかかります。電子化手数料は、1,200円+(1枚×700円)=1,900円となります。つまり、願書が1枚の場合は、1,200円+700円=1,900円となります。

郵送での出願

郵送の場合は、「郵便」又は「信書便」で提出する必要があります。「郵便」又は「信書便」以外で送った場合は、特許庁に到達した日が出願日となってしまいますので注意が必要です。また消印が不明な場合も、特許庁に到達した日が出願日となってしまいます

※ この場合、後日、「出願日証明書提出書」に書留郵便物受領証を添付して提出すれば、出願日が郵便局に差し出した年月日に訂正されます。

誤配防止のために、封筒には朱書きで「出願関係書類在中」と記載しておいた方がよいでしょう。商標登録は早い者勝ちなので、一日でも早く出願するのが得策です。同日であれば、時刻までは判断されません。

オンライン出願

近年では、ほとんどの出願がオンライン出願されています。自宅や会社から24時間365日いつでも出願できるので便利です。また、電子化手数料がかからないので、複数の出願をする場合などは、紙で提出するよりも電子出願の方が経費を安くすることができます。電子出願をするためには、下記の手順で事前の準備が必要となります。

  • 電子証明書の購入
  • インターネット出願ソフトのインストール
  • 申請人利用登録
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