2018年4月2日から、商標の審査基準が改定されました。今回は、商標法3条1項柱書に関連する「商標の使用又は商標の使用の意思を確認するための審査に関する運用に係る改訂」について解説します。
商標法3条1項柱書には、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。」と規定されています。
つまり登録の要件として、その商標が「使用する商標」でなければいけないということです。使用する商標というのは、必ずしも、出願の際に使用している必要はありません。近い将来、使用する計画(意思)があれば足ります。
商品又は役務には、それぞれ類似群コードが付せられています。指定商品又は役務が多ければ多いほど、類似群コードも多くなります。
例えば、第3類の「化粧品」を指定している場合は、類似群コードは04C01の1個です。また、第3類の「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,つけまつ毛用接着剤,口臭用消臭剤,動物用防臭剤,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つけづめ,つけまつ毛」を指定している場合は、類似群コードは、01A01 01A02 01B01 03C01 03E01 03F01 04A01 04B01 04C01 04D01 04D02 13B03 21F01の13個です。
このように指定する商品が多くなればなるほど、類似群コードの数も増えていきまし。類似群コードの数があまりに多くなると、「本当に使用しているのか?使用する意思があるのか?」と疑義が生じる場合があります。
審査の段階で、商標の使用について疑義が生じた場合は、商標法3条1項柱書に基づく拒絶理由が通知されます。この通知の対処法としては、「商標の使用証拠」を提出するか、又は、まだ商標を使用していない場合は、「事業計画書」及び「商標の使用意思表示書」を提出します。
今回の商標審査基準の改定では、商標の使用意思についての審査基準が改定されました。
改訂前は、原則として、一区分の中に8以上の類似群コードがある場合は、商品又は役務の指定が広範な範囲に及んでいるものとして、商標の使用又は使用の意思の確認を行う。と規定されていました。つまり、一区分内における類似群コードの上限数は7以内でした。
類似群コードの数え方は、一つの商品又は役務に多数の類似群コードが付されている場合には、その商品又は役務の類似群コードが2以上であっても、1の類似群コードとして取り扱われていました。例えば、第25類の「被服」には(17A01 17A02 17A03 17A04 17A07)の類似群コードが付されていましたが、これは、1の類似群コードとして取り扱われていました。
改訂後は、一区分内における類似群コードの上限数は22以内となりました。類似群コードが22個以内であれば、商標の使用又は使用の意思の確認が行われることはないでしょう。
類似群コードの数え方にも改定がありました。改定後は、一つの商品又は役務に多数の類似群コードが付されている場合には、そのまま単純に類似群コードを数えます。例えば、第25類の「被服」には(17A01 17A02 17A03 17A04 17A07)の類似群コードが付されていましたが、これは、5の類似群コードとして取り扱われることになります。
この改定により、商品又は役務の選択の幅が広がり、「使用証拠」や「事業計画書」などを提出する手続きの手間が省けるようになりました。しかし、あまりに多くの商品又は役務を指定している場合は、商標登録後に、不使用取消審判で取消されることもありますのでご注意ください。