何人も、商標掲載公報の発行の日から二月以内に限り、特許庁長官に、商標登録が次の各号のいずれかに該当することを理由として登録異議の申立てをすることができる。この場合において、二以上の指定商品又は指定役務に係る商標登録については、指定商品又は指定役務ごとに登録異議の申立てをすることができる。
登録異議申立は、商標掲載公報の発行日から2ヵ月以内に、「その登録に異議あり!」と申立をすることをいいます。
申立は、誰でもすることができます。
申立があった場合、審判官の合議体(3~5人)により、登録処分の適否について審理が行われます。
審理の結果、申立理由が認められた場合には、商標登録を取消すべき旨の決定がされます(取消決定)。その場合、商標権は初めから存在しなかったものとみなされます。取消決定に不服がある場合は、審決等取消訴訟において不服申立ができます。
審理の結果、申立理由が認められない場合には、商標登録を維持すべき旨の決定がなされます(維持決定)。維持決定に不服がある場合は、審決等取消訴訟において不服申立ができませんが、別途無効審判で争うことができます。
異議申立は、商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するために、特許庁自らが登録処分の適否を審理し、瑕疵ある場合には、その是正を図るものです。
一方で無効審判は、瑕疵ある登録について、その登録を無効にするために、当事者間の紛争解決という私益的な目的のために利用されています。
異議申立 | 無効審判 | |
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請求人 | 何人も可能 | 法律上の利害関係人のみ |
請求期間 | 商標掲載公報発行日から2ヵ月 | 商標権消滅後も可能 |
異議・無効理由 | 拒絶理由(6条を除く)+8条1項 | 異議理由+過誤登録+後発理由 |
異議申立は、公報発行から2ヵ月以内に申立が必要ですが、無効審判は、設定登録後いつでも請求することができます。
となると、異議申立と無効審判が同時に特許庁に係属する可能性もでてきます。
その場合、商標権者は、異議申立と無効審判の双方に対応しなければならず、相当な負担が生じます。
また、無効審判で無効になった場合は、異議申立の審理をする必要がなくなり、逆に異議申立で取消になった場合は、無効審判の審理をする必要がなくなります。となると、これまでの審理が無駄になり、特許庁や商標権者に無用が負担が生じる結果となってしまいます。
さらに、同一理由・同一証拠に基づいて審理が行われている場合に、結果に矛盾が生ずる可能性もあります。
こうした不具合を調整するためにも、特許庁は下記のように決めています。
原則として、無効審判の手続きを中止し、異議申立の審理を優先して審理し、確定後に無効審判の審理を続行します。
ただし、無効審判の審理が進行しており、審決が早期に結審できる場合には、無効審判を優先して審理する場合もあります。