その商標登録がその商標登録出願により生じた権利を承継しない者の商標登録出願に対してされたとき。
商標法46条1項4号には、その商標登録がその商標登録出願により生じた権利を承継しない者の商標登録出願に対してされたときは、無効理由になる旨が規定されています。
これは、誤って無権利者に登録がされてしまった場合の救済規定として設けられています。ここで注意が必要なのは、この規定は、権利を承継しない者の出願に対してではなく、権利を承継しない者の登録に対しての規定であるということです。
出願・審査中に、何らかの手違い等により、権利を承継しない者に商標登録されてしまった場合についての規定です。
そもそも商標は選択物ですので、特許法でいうところの冒認出願という概念はありません。特許法の場合は、発明者でない者で、その発明について特許を受ける権利を承継していない者による出願のことを冒認出願といい、特許の拒絶・無効理由に該当しますが、商標法の場合は、冒認出願ということはないので、拒絶・無効理由の規定はありません。
特許を受ける権利を有する者の出願というような、商標を受ける権利を有する者の出願などという概念はありません。
商標登録は早い者勝ちです。同じ商標を使用していた場合は、先に出願した者に権利が付与されます。先に使用していたという言い訳は、原則、通用しません。
公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標
商標法には、冒認出願という概念はありませんが、それに近い意味を有するものとして剽窃的な出願というものがあります。
剽窃的な出願とは、例えば、他人の出願に係る商標を知って、その他人の業務を妨害する目的で、先に出願するなどという場合です。
このような剽窃的な出願は、商標法4条1項7号の規定により、拒絶・無効理由になる場合があります。ただし、近年の傾向では、当事者間の私的な問題は、公の秩序又は善良の風俗を害するというような事情があるということはできないとして、商標法4条1項7号の規定を認めないと判断される場合も多く見うけられます。
大切な商標は、早めに出願・登録しておきましょう。