音商標というのは、メロディー、音声、自然音などからなる商標のことで、聴覚で認識される商標のことです。「商標」というと、文字や図形(ロゴ)からなる商標を思い浮かべる人が多いかもしれませんが、音についても商標登録することができるのです。
このような音商標は、2015年4月1日から登録が認められるようになった比較的新しい商標です。ちなみに、音商標と同じく新たに登録が認められるようになった商標には、ホログラム商標位置商標色彩商標動き商標があります。
さて、新たに登録が認められるようになった音商標ですが、登録第1号は、テレビコマーシャルでお馴染みの久光製薬会社の「ヒサミツ♪」という商標です(登録5804299)。みなさんも一度は聞いたことがあるでしょう。あのリズム、あのメロディーに、「ヒサミツ」という言語が組み合わさって、音商標を構成しています。一般的に、音商標を構成する要素としては「音楽的要素」「言語的要素」「自然音」などがあるといわれています。
メロディー(音楽的要素)のみで構成されている音商標もあれば、メロディー(音楽的要素)と歌詞(言語的要素)が組み合わさった音商標もあります。実際に、どのような音商標が登録されているのか、具体例をみると理解しやすいでしょう。
【コメント】この商標は、音声のメロディーからなる商標です。音楽的要素と言語的要素で構成されている音商標です。CMで一度は聞いたことがあるでしょう。ちなみに、「ボラギノール」も天藤製薬株式会社の登録商標なんですね(登録0138809、等)。また、「痔にはボラギノール」というフレーズについても商標登録しています(登録5833615)。
音商標について「いまいち、よく分からないなー」という人も、これらの登録例を見るとピンときたでしょう。CMでお馴染みのラッパのメロディーを聞くと「大幸薬品の正露丸だな」と認識できます。また、「おーいお茶」という音声を聞くと「あ、伊藤園のお茶だな」と認識できます。このような音は、商標としての機能(自他商品識別機能、出所表示機能、品質保証機能、宣伝広告機能)を発揮しているものとして、商標登録が認められています。
実際に、どのような音商標が出願・登録されているのか調べてみましょう。音商標の調査は、特許情報プラットフォーム(J-Plat Pat)を使用して、簡単に行うことができます。
先ずは、サイトの上にある商標にカーソルを合わせます。すると、選択項目が出てきますので、上から二番目の「商標検索」をクリックします。
この画面が出てきたら、下の方にある「検索オプション」を開き、「商標のタイプ」の欄の「音商標」にチェックをしましょう。そして「検索」をクリックするとヒット件数が出てきます。「一覧表示」をクリックして、音商標の出願・登録の一覧を確認しましょう。様々な企業や個人が、音商標の出願・登録をしているんですね。面白い音商標がたくさん出願されています。
音商標については、ウィーン図形分類において、例えば下記のように分類されています。各分類毎に音商標の検索をすることも可能です。
音商標の出願方法については、基本的には、通常の出願と同じです。必要事項を記載した商標登録願を特許庁長官宛に提出します。商標登録願の記載事項について、通常の出願との違いは、主に下記の4点です。
五線譜により記載する場合は、必ず下記事項を記載しましょう。
演奏楽器や声域などの音色についても、なるべく記載するようにしましょう。ただし、楽曲のタイトルや作曲者名などの、音商標の構成要素ではないものについては記載することはできません。
文字により記載する場合は、下記事項に留意しましょう。
記載する文字は、大きさ及び書体が同一の活字を用いて、横書きで記載しましょう。
【商標登録を受けようとする商標】の欄の下に【音商標】の欄を記載します。
【音商標】の欄の下に【商標の詳細な説明】の欄を設けることができます。基本的に、音商標の場合は、商標の詳細な説明の記載は必要ありません。必要な場合は、記載してください。
願書に光ディスク(CD-R又はDVD-R)を添付する必要があります。願書の記載方法については、【提出物件の目録】の欄を設けて、【物件名】の欄に「商標法第5条第4項の物件 1」と記載します。
オンライン上で願書を提出する場合は、先ずは願書のみをオンラインで提出し、その提出日から3日以内に、商標登録を受けようとする商標を記載した光ディスクを添付した「手続補足書」を書面で提出します。その際に、願書には、【提出物件の特記事項】の欄を設けて「手続補足書により提出します。」と記載します。
音商標にかかる費用は、出願印紙代も登録料も、通常の商標登録と同じです。存続期間も設定登録の日から10年間で、何度でも更新することができます。更新料も、通常の商標登録の場合と同じです。
音の商標登録Q&Aについては、こちらのページをご覧ください。